2023-08-19 “Strangeland”道東の印象(2023年8月根室釧路旅行記)
2023年8月7日(月)
2023年8月7日から9日まで、根室・釧路方面に旅行に出かけた。
以前から東へは行ってみたいとは思っていて、今年こそはと思っていたが、
なかなか日程を決められなかったのと、天気が今ひとつだったのと、宿が取れなかったなどで決め手に欠けていた。
ただ悩んでいても時間が惜しいし、次にいつ休めるかも分からないので、
キャンプもできる準備もしておいて、結局その朝に思いつきのように出発した。
自宅を午前8時半くらいに出発し、最寄りの恵庭インターチェンジから道央自動車道、
すぐに道東自動車道に入って、一度だけ休憩を挟みながら、
現在の終点である阿寒インターチェンジまでひたすら4時間半ほど走り続けた。
以前は峠越えに苦労した日高山脈もトンネルで抜けられるようになって非常に楽にはなったが、
単調な退屈さもある。その辺は一人ドライブならではの苦労だろう。
阿寒インターチェンジから一般道を経て、すぐに釧路新道からさらに東へ進んでも良かったが、
車内からでもロケハンをしておきたかったので、国道38号などを経て釧路市街地を走る。
さっそく立ち寄ってみたいところもいくつもあったが、とても今回だけでは回りきれないだろう。
さらに東に進んで厚岸町にある道の駅でようやく休憩とする。
札幌からは大体6時間ほど。キツネやシカは珍しいものではないが途中で野犬の群れを見た。
厚岸といえばやはり牡蠣なのでちょっと奮発して食べ比べセットなどを頼む。
非常に美味だったが、運転手でなければもう一つの名物であるウィスキーも味わって見たかった。
道の駅は丘の上にあって町がよく見える。
厚岸湾の中心にかかる厚岸大橋が町のシンボルのようになっていて、
湾岸の狭い陸地に町が張り付くような感じは瀬戸内のようにも見える。
少しでも時間を取って歩いておくべきだったかもしれない。
しばらく太平洋岸を走る。
といっても道は丘の上や森の中であったり、または霧に包まれたりで海はなかなか見えない。
目的地の一つとしていた浜中町にある霧多布岬を訪れてしばし歩き回る。
ここ数日の札幌は30度を超える猛暑だったために、20度前後の気温は曇り空であっても心地よいものだ。
霧多布岬にはキャンプ場もあってなかなか人気もあるらしい。
テントを張れる準備はしているが、翌日は大雨が予想される中で結局断念した。
あちこちと寄り道をしたが、午後6時頃にようやくその日の宿に到着した。
根室の入り口である温根沼にあるコテージで、直前に安めの部屋を取ることができた。
プレハブ住宅一つ一つを客室にしたような感じで、窓の外はすぐ風蓮湖だ。
一般の観光客はもちろん道東にも多く訪れているライダーやサイクリストを相手にしているような感じだ。
チェックインした頃にはもう日も暮れかけていて、一息つけたらすぐに寝てしまいそうだったが、
ゴールはまだ少し先なのでさらに東を目指してまた車に乗る。
宿から本土最東端納沙布岬までは30キロメートルあまりあるが、数百キロメートルも走っているとつい近場という感覚になる。
根室市街地を抜けるとほとんど信号のない道で実際2,30キロメートルくらいはあっという間である。
納沙布岬は観光地であるが、自分の他には誰もいなかった。
時間帯の違いはあるかもしれないが、3年前に訪れたノシャップ岬や宗谷岬はコロナ禍に関わらず結構人がいたのに。
海に明るさは残っているが、強い風と波が続いていていかにも最果てに来たという感じがする。
空が曇っているためか、ただ明るさが足りないだけなのか歯舞や国後の島影は見えなかった。
ずっと立っていると肌寒くて、8月であるということを忘れる。
誰もいないと思っていたが、岬から少し離れたところに右翼団体のバスが何台かあって野営をしていた。
70数年来の国境紛争地域でもあるし、8月でもあるし、その手の人たちの訪問は多いようだ。
すっかり日も暮れて、雨風も強くなってきたので町に戻って、
恐らく本土最東端であろう銭湯とサウナに立ち寄った。
地元の人しか訪れないよくある銭湯といった感じで、
話を聞いているとやはり客は漁業関係者がほとんどのようだ。
遠くまで来たもんだと感慨に耽りながら湯船に浸かる。
もう午後9時近くになっていたので、夕食はコンビニエンスストアで調達した。
といっても全国どこにでもあるコンビニではなくて、根室でのみ展開している「タイエー」というお店。
函館にあるハセガワストアと同じスタイルでその場で調理される焼き鳥弁当が有名である。
商品の多くはセイコーマートと共通しているが、惣菜類なども充実していてスーパーマーケットにも近いかもしれない。
今回は郊外に宿を取ったので、どこかで飲んでから帰るというわけにはいかなかったが、
焼き鳥ほかあれこれと酒肴を買い込むのも悪くないし、一人で入れそうな店を探すより気楽でいい。
厚岸で買ったつまみも加えよう。
部屋には冷蔵庫や電子レンジなども揃っていたから、
当初考えていたよりは結構楽しい最東端の酒宴となった。
2023年8月8日(火)
この日の根釧地域一帯は終日雨予報だった。
とはいえ、少しは街歩きもしないとここまで来た意味も薄れるというものだ。
まずは根室市の中心部に向かって、雨が降るまで大体2時間弱、飲食店の集まるところなどを歩いていた。
かつてはそれなりに賑わっていたのだろうが、もう長い年月が経って廃墟となってしまったところも多い。
自分の他に歩く人もほとんどなく(観光客さえいなかった)、カモメの声だけが響いていたのが印象的だった。
なんとか雨が降る前に町や漁港などを歩き、次の目的地としていた別海町の野付半島へ向かう。
野付半島はオホーツク海に突き出した細長い砂嘴で、ここもいつか訪れてみたいと思っていた。
根室市の中心部からは約100キロメートル、車で1時間半くらい。
ちょっとした市街地や酪農地帯などを過ぎて、野付半島の入口から何キロメートルも海に挟まれた一本道が印象的で、
気候や状況は対極といっていいが沖縄にある海中道路を走った時のことを思い出した。
相変わらず雨風が吹いているが、それも相まって荒涼とした風景は最果てに来たという改めて気持ちを強くさせた。
ただ観光客の姿と鹿の群れが結構いて、今回訪れた中ではもっとも賑やかな場所だったかもしれない。
16キロメートル先には国後島が見えるというが、この日は荒れた海が続いているだけだった。
野付半島から次は中標津町へ向かう。
中標津は車から町並みを見るだけだったが、なかなか活気のありそうな感じもした。
町外れにある蕎麦店で遅い昼食。事前にあたりは付けていたけど、美味い蕎麦を食べることができた。
弱いながらも雨は降り続いていたので、休憩もしつつ、どこに行こうかとしばらく考える。
結局は予定通りに釧路に向かうことにして、また100キロメートルくらい走って、とりあえず釧路西港の何箇所かに立ち寄った。
雨もほとんど上がったので、ようやく中心部に入って、日が暮れるまで幣舞橋や釧路駅周辺の歓楽街などを撮り歩いた。
釧路駅北側にある「鉄北センター」という飲食店街が新宿ゴールデン街や立石の呑んべ横丁のようで懐かしさを感じた。
釧路は道東最大都市ではあるが、中心部はシャッターを下ろした店や、
崩れかけていた百貨店もあって寂しさの方が目立っていた。
街頭放送とやはりカモメの声ばかりが印象的で、釧路に限らず北海道の地方都市はどこもそのようなものだろうけど、
これから人口減少が進む中でどうなってしまうんだろう気持ちにさせる。
幣舞橋やフィッシャーマンズ・ワーフ周辺にはいくらか観光客もいたが、
ほとんどホテルは満室だったのにみんなどこにいるのだろうと思った。
本当に予定を決めていなくて、とりあえず夕食はスーパーマーケットで買ったものにして、
リニューアルされた浴場やサウナが評判の大喜湯という大きな銭湯に立ち寄って、
そのまま札幌に戻ってしまおうかという考えもよぎったが、
最終的には幹線道路沿いにあるラブホテルにチェックインすることになった。
一人で入るのは若干気が引けたが(?)、予約はいらないし価格の割に設備は充実しているし、
ビジネスやレジャー向けに利用できるプランもあるようで、今後は選択肢に入れてもいいなと思った。
この日も部屋でフィッシャーマンズ・ワーフで買ったものをつまみに飲んで終わった。
2023年8月9日(水)
夜中に強い雨が降っていたようだが、窓のない部屋にいては外の様子を知ることはできない。
チェックアウトして階下にあるガレージのシャッターを開けると(この妙なアクセスの良さもメリットかもしれない)、
雨は上がっていたが、周囲には霧が立ち込めていて、いかにも釧路らしいという感じがした。
まずは釧路市立博物館に向かう。
釧路に関して自然地理や歴史、そしてアイヌ民族に関する展示がバランスよくしっかりした量で揃っていて、
札幌にもこんな博物館があればいいのになと思った。
昭和30年代まで根釧地域にあった殖民軌道の展示も興味深かった。
車は駐車場に置いたままにして、博物館のある春採公園をしばらく歩く。
春採湖の風景はなかなかいいが、周りは結構ぬかるんでいて、虫がたくさん飛んでいる。
この春採公園の他にも鶴ケ岱公園や米町公園など、釧路には歴史ある公園があるようだ。
しばらく周辺の町を歩く。
結構起伏があるが、釧路はこのあたりが発祥地・旧市街地であるようだ。
近くにあった竹老園という道内最古の老舗蕎麦店にも行ってみたかったが、
お昼時で混み合っていて、その後もタイミングが合わず行けずじまいだった。
幣舞橋を渡ってしばらく釧路川沿いを歩き、前日に立ち寄った飲食店街ももう一度歩く。
霧は依然立ち込めているが、気温は上がってきてなかなかに蒸し暑い。
ある程度町を周って、別の店で蕎麦にしてから、丘を登って博物館に戻る。
他にも新釧路川の河口辺りなど、行ってみたいところはいくつもあったが、
気付けば午後4時になろうとしていて、いつ札幌に戻れるか分からないので、
何年後になるか分からないけど、次回に訪れるということにした。
思えば前回に少しだけ釧路を歩いたのは2012年だったから、次も10年後とかになってしまうかもしれない。
帰りもすぐに高速道路に乗っても良かったが、それでは面白くないので国道38号を選んで、太平洋岸を走り山を越えて十勝まで。
速度取締の心配さえなければ、地方の国道や幹線道路をひたすら流すのが一番好きだ。
帯広市内も少し走ったが、さすがにもう撮り歩く元気はなく、ここもまた他日ということにして、
芽室帯広インターチェンジから道東自動車道へ。札幌まではもう一本道だ。
高速道路より一般道の方が好きではあるけど、いくら元気が残っていたとしても、
もう日勝峠や石勝樹海ロードの難所はわざわざ選ばないだろうなという気はしている。
天候があまり良くない中、行き当たりばったりの旅となったが、
やはり札幌から遠い見知らぬ場所に身を置くというのは一番の気分転換になるし、
様々な発見もあったので、これからも時間ができたら北海道のどこか遠くへ車を走らせてみたいと思う。
写真はこちらに。
厳選しすぎたかもしれないけど、結局36点に留まった。